トラックミキサーで基本的な音作り(2)

トラックミキサー使用例:

 前回の続き。

 では実際に、トラックミキサーを使ってみる。前置きが長くなって尻込みしている読者もいるかもですが、操作は非常に簡単なので安心して。操作するボタンは次の写真のとおり、非常に少ない。

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02-トラックミキサーはPAN-EQボタンを押すだけ.jpg

 [PAN/EQ] ボタンの中にトラックミキサー設定の全てが詰め込んである。[PAN/EQ] ボタンは太字ロゴ R16 の下にある。上の写真をクリックすると適度に拡大するので確認してください。さっそく [PAN/EQ] ボタンを押してみると、最初は次のような画面になる。

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03-PANの調整.jpg

 以降の調整は『矢印キー』と『ダイヤル』を使って行う。これはパン調整用の画面。写真では『PAN=L50』になってるが、初期値は『PAN=C』(センター)になっていた。ダイヤルを左に回すとパンが左寄り(L)に、右に回せば右寄り(R)に移動する。パンの調整範囲は『L100~C~R100』となっていた。

 で、『左右矢印キー』を押すと対象トラックを変更できる。Track1 が表示されている状態で『右矢印キー』を押せば、Track2 のパン調整ができるワケ。

 各トラックのパン調整が済んだら左矢印キーで Track1 に戻り、次は下矢印キーを押してみよう。すると次のような画面になる。

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04-EQ-HI-G-調整.jpg

 これ以降はイコライザーの設定項目となる。画面表示の『EQ HI G』とは『高音域(HI)のゲイン(G)調整をするイコライザー(EQ)』の略だった。ダイヤルを回すことで『G=-12~0~12dB』の範囲で調整できる。これは主にノイズカット・フィルターとして使うと思う。

 モニター・ヘッドホンから『シー…』みたいなホワイトノイズが聞こえる時に、このゲインを下げてやるといい。ただ、ゲインを絞り過ぎると楽器本来の音が痩せてしまうので、そこは程々に。

 で、イコライザーは『複数項目をワンセット』で指定することになっている。ゲインを変更したらフレーケンシーも調整する。ここで下矢印キーを押すと、次が『フレーケンシー設定』になっている。↓

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05-EQ-HI-F-調整.jpg

 フレーケンシー設定とは、EQ でブーストorカットするターゲット周波数を決めること。HI の場合、初期値は 8.0kHz で『500(Hz)~18(kHz)』の範囲でダイヤル指定できる。例えばホワイトノイズが気になる時は『シー…』という音が一番目立たなくなる所を探すが、結局はデフォルト設定(8.0kHz)でいい気がする。

 あとはパン調整の時と同様で、左右矢印キーでトラック別の設定をすればいい。最初は EQ 設定を全トラックで同じにして構わない。トラック別にエフェクトを追加した時に、その都度微調整する。文章にすると長くなるが、実際に使ってみると意外と直感的に操作できるので安心して。
 

 ここまで来れば、矢印キーの意味が理解できると思う。『左右キーはトラック移動』で使い、『上下キーはトラックミキサーの設定項目の選択』で使う。で、『EQ HI F』の次は、中音域(MID) EQ の設定項目となる(上下矢印キーで項目を移動:以下同)。

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06-EQ-MID-G-調整.jpg

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07-EQ-MID-F-調整.jpg

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08-EQ-MID-Q-調整.jpg

 MID では帯域幅を指定する Q値パラメータを指定する項目がある。初期値は 0.5 で、範囲は 0.1~1.0 となっている。が、素人が中音域をいじるのは難しいと思うので、自分はデフォルトのままにしている。中音域をいじるのは『ボーカル』とか『ディストーション・サウンド』を強調する時かな。中音域の次は低音域(LO)。

 

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09-EQ-LO-G-調整.jpg

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10-EQ-LO-F-調整.jpg

 LO のゲインだけ -2dB にしてある(初期値は 0dB)。LO のゲイン設定は、低音部の歪み(音割れ)を防ぐために比較的よく使うと思う。例えば生ギターの 6弦だけ音割れが起きるというのはよくある話で、これは LO のゲインを下げてやることで解決できる(F は初期値のままでいいと思う)。EQ 設定はここまでだがトラックミキサー設定は、まだ続く。次は待望の……

 

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11-REVERB-SEND-調整.jpg

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12-CHORUS-SEND-調整.jpg

 センドリターン・エフェクト(リバーブ、コーラス/ディレイ)の効果の深さを指定(初期値は 0、つまり効果無し状態)。ここをいじった途端にトラックの再生音が激変するので、調整するのが楽しくなるトコロ。

 効果の深さとは『エフェクト効果をエフェクター回路に送る量(センドレベル)』を指定することを指す…正確に言うと『信号の送り量』らしいが、自分はメーカー側の人間ではないので、あえて正確性よりもユーザーが納得しやすい表現を使って説明している。

 この深さの指定が『トラック別にできる』ことが、あとで重要になってくるが、それは後述する(次回投稿予定)。要するに残響音(リバーブ)や反射音(ディレイ)のかかり具合をトラック別に変えることができる。トラックミキサー設定は、まだ続く。残りは……

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13-FADER-調整.jpg

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14-STEREO-LINK.jpg

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15-INVERT.jpg

 フェーダー調整は、普通はボリューム・スライダーを手で上下すればいいので、これを使うことはないと思うが、自分が知らない存在理由があるのかもしれない。

 ステレオリンクはダイヤルで on/off を切り替えるだけ。主にステレオ PCM レコーダーで録音した『ステレオ WAV ファイル』を 2つのトラックに割り当てる時にステレオリンクを on にする。トラックに割り当て可能な WAV ファイルには限定条件があって……

● 16ビット/44.1kHz の音質に限定。
● 主ファイル名が『 英大文字、数字、_ 』を使った 8文字以内に限定。
 (ファイル名の例:ABC_1234.WAV)

…外部 wavファイルをトラックに読み込むには上記のような条件があるので、そこは注意が必要。最高音質で録音した WAV ファイルは、いったん CD 音質に下方変換しないとトラックに読み込んでくれないらしい(ステレオリンクを試していないので未確認)。

 INVERT は、on にするとトラックの左右チャネル(位相)を反転する。プログラミングをやってる人なら INV回路(論理演算の NOT)を連想するのですんなり理解できると思うが、普通の日本人には馴染みの薄い英単語だ。…たぶん自分は、INVERT は使わないと思う。
 

 トラックミキサー設定はこれで全部。書いてみるとけっこうあるが、実際に変更する箇所はそれほど多くない。PAN、EQゲイン、EFFECTセンドレベル、たまにステレオリンク、このぐらいかな。設定が終わったら [EXIT] ボタンで設定から抜け出す。または [PAN/EQ] ボタンをもう 1回押す(トグルスイッチになっている)。

 ちなみに、最後に [ENTER] ボタンを押す必要はありません。トラックミキサーはテレビのボリュームつまみのようなもので、『矢印キーとダイヤルの操作』だけで直ちに効果が適用される。トラックミキサー設定時の [ENTER] ボタンは、各設定項目の on/off を切り替えるスイッチとして働くので、そこは逆に要注意です。
 PCユーザーは、設定完了したら最後にエンター・キーを押すのが習慣化しているので、そのせいで、いつの間にか『センドリターン・エフェクトが off になっていた』…ということがある(体験済み)。エフェクト効果がモニター出来ない時は、設定が off になってる可能性が高いので、慌てずにそこをチェックしましょう。

 次は、トラックミキサーと関係の深い『センドリターン・エフェクト』について書こうと思うが、今回も既に長文になっているので、ここでいったん区切る(次回につづく)。