センドリターン・エフェクトのプリセット(定義済みエフェクト)を使う

 前回の続き。

 次はセンドリターン・エフェクトを指定する(プリセット済みの既製エフェクトを選択するだけですが)。あれ? それなら前回に済ませたハズでは… と思う人もいるかもですが、前回のは『効果の深さ』をトラック別に指定しただけです。それでも効果がちゃんとモニターできるのは、デフォルトのリバーブ・ディレイ設定がプリセットされていたため、『REVERB SEND』または『CHORUS SEND』を 0 より大きくした途端、その効果が現れたワケ。

 ところで。本題の前に、エフェクトを指定する大まかな流れを確認しておく(予備知識として必要なので)。R16 のマニュアルでは次のような用語で説明しているので、用語の使い方と操作の関係を明確にしておきたい。

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00-エフェクト指定の流れ.jpg
※この図はブログ執筆者(foussin)が書き起こしたもので、R16 のマニュアルを丸写しにしたものではありません(マニュアルよりも分かり易い図になっているハズ)。

●解説:
手順1. エフェクトの選択
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これは『エフェクト回路の選択』と、回路という単語を加えると
分かり易くなる。エフェクト回路の種類(2種類)を選択する。

種類:SEND RETURN EFFECT と INSERT EFFECT の2種類
操作:該当するボタンを押す
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01-エフェクト回路選択の該当ボタン.jpg
 
手順2. アルゴリズム選択
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『アルゴリズム(手順)』では技術屋さんの専門用語なので分かりにくい。が、
後述のパッチを構成する最小単位である『エフェクト・モジュール』の配置の
順番が同じになっているという括りで、アルゴリズムと呼んでいるようだ。

これは『エフェクト・カテゴリーの選択』と書いた方がずっと
分かり易くなると思う。要するに『何系のエフェクト』なのかを表している。

種類:センドリターンは 2種類、インサートは 9種類
操作:左右矢印キーで選択
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02-液晶画面と矢印キー.jpg
 
手順3. パッチの選択
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ユーザー目線で見れば、パッチとは『エフェクト本体』を意味すると思うが、
エフェクトという言葉が何度も登場するのも混乱の元だし、ここは『パッチ』
という名称をそのまま使うのも悪くないと思う。

パッチは『エフェクト・モジュール』という部品を組み合わせて作られている
そうだ。で、どうやらこのモジュール、マニュアルから察するとオブジェクト
指向プログラミングで出来ているっぽい。

アルゴリズム(カテゴリー)が同じパッチは、おそらくエフェクト・モジュール
のパラメータの値を少し変えているだけで、それに別名を付けて区別している
だけなのかな、と自分では推測している(確証は無いが)。

種類:パッチ数は、いっぱいある (数えるのが面倒なほど…)
操作:ダイヤル操作で選択
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03-液晶画面とダイヤル.jpg
 
手順4. パッチの編集
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パッチは、ユーザーがある程度自由に編集できる。が、これについては言及を
避けたい。下手にいじってプリセット設定を上書きしたりすると、元に戻すの
が大変そうな気がするので。当分の間は定義済みパッチを選択して使うだけで
いいかなあ、と自分は思っている。

操作:該当パッチを選択して『矢印キー』を押すと EDIT と表示。
   (その後の操作は未確認なので書けない)
注意:編集したくない人は EDIT と表示されたら『矢印キー』で戻ろう。
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04-液晶画面と上下矢印キー.jpg

 ここまでで、エフェクトを選択するまでの流れが予備知識として掴めたと思う。だが、今回の記事のメインテーマは『センドリターン・エフェクトを使う』ことだった。それについては、まだ全然書いてない。。。
 

センドリターン・エフェクトの指定:

 まずは上述のとおりの操作をする。[SEND RETURN EFFECT] ボタンを押し、左右矢印キーで『リバーブ』か『コーラス/ディレイ』かを選択。あとはダイヤルを回して使用する『パッチ』を選ぶ…操作はこれだけだ。

 ところで、トラックミキサー設定では『左右矢印キー』でトラックが選択できたが、センドリターン・エフェクトではトラックの選択ができない。つまり、リバーブ、ディレイ系のパッチは全トラック共通のエフェクトということだ。

 トラック別に残響音が違っていたら確かに不自然なので、これは理に適っている。その代わり、センドレベルはトラックミキサーで個別設定ができるので、リードギターは強めのディレイにして、リズムギターにはエフェクトをかけない…といった使い方ができる。なので、トラックミキサーでのセンドレベル指定が重要になってくる。
 

 さて。プリセット済みのパッチは、リバーブが22個(00~21)、コーラス/ディレイが18個(00~17)ある。それを全部紹介するとマニュアルの丸写しになってしまい、それは著作物の無断転載にあたる(引用と認められるかは微妙なトコロ)。それに、それだけでは自分自身の備忘録にならないので、自分なりの分類をしようと思う。

●デフォルトのパッチ:
 リバーブ………… :00.TightHal ... 汎用リバーブ(硬め)
 コーラス/ディレイ:00.ShortDLY ... 汎用ショートディレイ

トラックミキサーでセンドレベルを 0 より大きくした途端に聞こえてくる
デフォルトのエフェクトがこの 2つ。おとなしめで自然な効果。

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●リバーブ系のパッチ:
 これは、ダイヤルを回しながら曲調にマッチするパッチを選べばいいと
 思うので詳細は省く。先日の『窓辺の三月(失敗テイク)』の動画では、
 12.BritHall というパッチを使った(と思う)。

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●ディレイ系のバッチ:自分が気になったパッチをいくつか列記
 02.Doubling …ディレイ間隔が非常に短いものをダブリングと呼ぶらしい。
 10.SoloLead …強いのでソロ楽器だけに CHORUS SEND をかけて使うかな。
 11.WarmDly  …自然なアナログ風ディレイ。

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●コーラス系のバッチ:自分が気になったパッチをいくつか列記
 01.GtChorus …ギター強調用。
 07.DeepCho  …深い汎用コーラス。
 08.Vocal    …ボーカル強調用。
 12.EnhanCho …弱めだが、元の音源が良ければ使えそう。ダブリングで
        コーラス効果を生み出してるらしい(実際はディレイ?)。

 13.Detune   …フランジャー的、フェイズシフター的な強い効果。
 14.Natural  …いい感じ。先日の『失敗テイク動画』では、これを使った
        と記憶しているが、よく覚えていない。ブログを書くため
        に録音後もアチコチ設定をいじってるので。。。

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●テンポに同期するディレイのバッチ:
 04.Delay3/4 …付点8分ディレイ
 05.Delay3/2 …付点4分ディレイ
 15.Whole    …全音符ディレイ
 16.Delay2/3 …2拍3連ディレイ
 17.Delay1/4 …16分ディレイ

 今は試さないけど、いずれ試してみたい。テンポと同期ってメトロノーム
 のテンポと同期するってことかな。『かえるの合唱』とか『カノン』とか
 クイーンの『ブライトン・ロック』とかが 1人で録音できるって事と思わ
 れる。ちょっと気になったのでメモ。

 とりあえず『トラックミキサーで音作り』関連のトピックはここまでとする。気力が残っていれば『インサート・エフェクト』についても書くつもりだったが、もう気力が残ってない。つーか、ギターの練習にもっと力を入れたいし。。。

 

 それにしても、MTR の名前の『R16』…Web ページ解析エンジンは、このページを『R指定付きのページ』と勘違いしてるような気がするなぁ…別にいいけどさ。

ZOOM ズーム マルチトラックレコーダー 18トラック同時録音 16トラック同時再生 R16

ZOOM ズーム マルチトラックレコーダー 18トラック同時録音 16トラック同時再生 R16

 

 このとおり、R指定の商品ではありませんので。。。(^^;

(おしまい)

トラックミキサーで基本的な音作り(2)

トラックミキサー使用例:

 前回の続き。

 では実際に、トラックミキサーを使ってみる。前置きが長くなって尻込みしている読者もいるかもですが、操作は非常に簡単なので安心して。操作するボタンは次の写真のとおり、非常に少ない。

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02-トラックミキサーはPAN-EQボタンを押すだけ.jpg

 [PAN/EQ] ボタンの中にトラックミキサー設定の全てが詰め込んである。[PAN/EQ] ボタンは太字ロゴ R16 の下にある。上の写真をクリックすると適度に拡大するので確認してください。さっそく [PAN/EQ] ボタンを押してみると、最初は次のような画面になる。

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03-PANの調整.jpg

 以降の調整は『矢印キー』と『ダイヤル』を使って行う。これはパン調整用の画面。写真では『PAN=L50』になってるが、初期値は『PAN=C』(センター)になっていた。ダイヤルを左に回すとパンが左寄り(L)に、右に回せば右寄り(R)に移動する。パンの調整範囲は『L100~C~R100』となっていた。

 で、『左右矢印キー』を押すと対象トラックを変更できる。Track1 が表示されている状態で『右矢印キー』を押せば、Track2 のパン調整ができるワケ。

 各トラックのパン調整が済んだら左矢印キーで Track1 に戻り、次は下矢印キーを押してみよう。すると次のような画面になる。

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04-EQ-HI-G-調整.jpg

 これ以降はイコライザーの設定項目となる。画面表示の『EQ HI G』とは『高音域(HI)のゲイン(G)調整をするイコライザー(EQ)』の略だった。ダイヤルを回すことで『G=-12~0~12dB』の範囲で調整できる。これは主にノイズカット・フィルターとして使うと思う。

 モニター・ヘッドホンから『シー…』みたいなホワイトノイズが聞こえる時に、このゲインを下げてやるといい。ただ、ゲインを絞り過ぎると楽器本来の音が痩せてしまうので、そこは程々に。

 で、イコライザーは『複数項目をワンセット』で指定することになっている。ゲインを変更したらフレーケンシーも調整する。ここで下矢印キーを押すと、次が『フレーケンシー設定』になっている。↓

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05-EQ-HI-F-調整.jpg

 フレーケンシー設定とは、EQ でブーストorカットするターゲット周波数を決めること。HI の場合、初期値は 8.0kHz で『500(Hz)~18(kHz)』の範囲でダイヤル指定できる。例えばホワイトノイズが気になる時は『シー…』という音が一番目立たなくなる所を探すが、結局はデフォルト設定(8.0kHz)でいい気がする。

 あとはパン調整の時と同様で、左右矢印キーでトラック別の設定をすればいい。最初は EQ 設定を全トラックで同じにして構わない。トラック別にエフェクトを追加した時に、その都度微調整する。文章にすると長くなるが、実際に使ってみると意外と直感的に操作できるので安心して。
 

 ここまで来れば、矢印キーの意味が理解できると思う。『左右キーはトラック移動』で使い、『上下キーはトラックミキサーの設定項目の選択』で使う。で、『EQ HI F』の次は、中音域(MID) EQ の設定項目となる(上下矢印キーで項目を移動:以下同)。

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06-EQ-MID-G-調整.jpg

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07-EQ-MID-F-調整.jpg

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08-EQ-MID-Q-調整.jpg

 MID では帯域幅を指定する Q値パラメータを指定する項目がある。初期値は 0.5 で、範囲は 0.1~1.0 となっている。が、素人が中音域をいじるのは難しいと思うので、自分はデフォルトのままにしている。中音域をいじるのは『ボーカル』とか『ディストーション・サウンド』を強調する時かな。中音域の次は低音域(LO)。

 

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09-EQ-LO-G-調整.jpg

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10-EQ-LO-F-調整.jpg

 LO のゲインだけ -2dB にしてある(初期値は 0dB)。LO のゲイン設定は、低音部の歪み(音割れ)を防ぐために比較的よく使うと思う。例えば生ギターの 6弦だけ音割れが起きるというのはよくある話で、これは LO のゲインを下げてやることで解決できる(F は初期値のままでいいと思う)。EQ 設定はここまでだがトラックミキサー設定は、まだ続く。次は待望の……

 

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11-REVERB-SEND-調整.jpg

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12-CHORUS-SEND-調整.jpg

 センドリターン・エフェクト(リバーブ、コーラス/ディレイ)の効果の深さを指定(初期値は 0、つまり効果無し状態)。ここをいじった途端にトラックの再生音が激変するので、調整するのが楽しくなるトコロ。

 効果の深さとは『エフェクト効果をエフェクター回路に送る量(センドレベル)』を指定することを指す…正確に言うと『信号の送り量』らしいが、自分はメーカー側の人間ではないので、あえて正確性よりもユーザーが納得しやすい表現を使って説明している。

 この深さの指定が『トラック別にできる』ことが、あとで重要になってくるが、それは後述する(次回投稿予定)。要するに残響音(リバーブ)や反射音(ディレイ)のかかり具合をトラック別に変えることができる。トラックミキサー設定は、まだ続く。残りは……

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13-FADER-調整.jpg

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14-STEREO-LINK.jpg

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15-INVERT.jpg

 フェーダー調整は、普通はボリューム・スライダーを手で上下すればいいので、これを使うことはないと思うが、自分が知らない存在理由があるのかもしれない。

 ステレオリンクはダイヤルで on/off を切り替えるだけ。主にステレオ PCM レコーダーで録音した『ステレオ WAV ファイル』を 2つのトラックに割り当てる時にステレオリンクを on にする。トラックに割り当て可能な WAV ファイルには限定条件があって……

● 16ビット/44.1kHz の音質に限定。
● 主ファイル名が『 英大文字、数字、_ 』を使った 8文字以内に限定。
 (ファイル名の例:ABC_1234.WAV)

…外部 wavファイルをトラックに読み込むには上記のような条件があるので、そこは注意が必要。最高音質で録音した WAV ファイルは、いったん CD 音質に下方変換しないとトラックに読み込んでくれないらしい(ステレオリンクを試していないので未確認)。

 INVERT は、on にするとトラックの左右チャネル(位相)を反転する。プログラミングをやってる人なら INV回路(論理演算の NOT)を連想するのですんなり理解できると思うが、普通の日本人には馴染みの薄い英単語だ。…たぶん自分は、INVERT は使わないと思う。
 

 トラックミキサー設定はこれで全部。書いてみるとけっこうあるが、実際に変更する箇所はそれほど多くない。PAN、EQゲイン、EFFECTセンドレベル、たまにステレオリンク、このぐらいかな。設定が終わったら [EXIT] ボタンで設定から抜け出す。または [PAN/EQ] ボタンをもう 1回押す(トグルスイッチになっている)。

 ちなみに、最後に [ENTER] ボタンを押す必要はありません。トラックミキサーはテレビのボリュームつまみのようなもので、『矢印キーとダイヤルの操作』だけで直ちに効果が適用される。トラックミキサー設定時の [ENTER] ボタンは、各設定項目の on/off を切り替えるスイッチとして働くので、そこは逆に要注意です。
 PCユーザーは、設定完了したら最後にエンター・キーを押すのが習慣化しているので、そのせいで、いつの間にか『センドリターン・エフェクトが off になっていた』…ということがある(体験済み)。エフェクト効果がモニター出来ない時は、設定が off になってる可能性が高いので、慌てずにそこをチェックしましょう。

 次は、トラックミキサーと関係の深い『センドリターン・エフェクト』について書こうと思うが、今回も既に長文になっているので、ここでいったん区切る(次回につづく)。